2019-01-01から1年間の記事一覧
三日ほど続けて知人らと飲み、昨日は一旦落ち着こうと散歩がてら買い物に出た。新作のメモを採るためのノートが必要だったんだ。ノートを買うのはほぼ十年ぶりだ。ノートを求めて文房具屋の店内をうろつくと、これから書く作品とようやく向かい合えるという…
来年は春にホルンを使った室内楽ものを一つ、秋にチェロ協奏曲を一つ、これを仕事の柱にしようと目論んでいる。ホルンの曲は数年前に書いた協奏曲の焼き直しになる予定だ。という訳で数年前に書いたその協奏曲のデータを探しているんだが、なかなか見つける…
一週間ほども続いた、一旦転がり出せば止まり方をしらない玉のようにすっとこどっこいな私の歩行も、最後はあるホールでようやく落ち着いた。昔の知人が自分のリサイタルの招待券を用意してくれたんだ。その名を太田圭亮君という、かつては活動を共にしたヴ…
ああ、まるでこれじゃあビリヤードの玉じゃないかと自分の事を思いながら、福岡の街をひたすらにあちらこちらへと転げ回った一週間だった。月曜日にお風呂を沸かし、火曜日にお風呂に入り・・・そんないささか頓珍漢だが、悠長なロシア人みたいに一週間を過…
ぽろぽろと次から次に溢れてくる音符を、うん、丁寧に汗を拭きとるみたいにいちいちメモしていたら、あれれ、あっという間に大学ノートが一杯になってしまった。おいおい、一体何曲書くつもりなんだよ。大盛り協奏曲でも書こうってのかい?うん、いいねえ、…
この一週間、大いに浮かれた。まるで中学生みたい。思春期の蒼白い小僧のように遊び回った。といっても何をしたって訳じゃあない。私の脳味噌、うん、そいつが浮かれて夢と妄想の中をひたすら遊び回ったんだ。もはや私の頭に鳴っている音、そいつは軽薄な祭…
最近はアマゾンの会員とやらにいつの間にかなってしまっていて、そのせいでよく無料おすすめ映画とかいうデータが送られてくる。内容もなにも確かめないまま、サムネイルを適当に眺め、特に嫌な気持ちにならなければそのままクリックするというような事を繰…
昨日、インターネットニュースで見たストーカー記事、十五万九千通のメールを送りつけたアメリカ女の記事、その関連記事とかいうやつを見ていたら、おお、出るわ出るわってのはこういう状態をいうんだね。欧米人の強烈な自我の発動が次々と記事にされている…
いつもの朝だ。日課になっているセバスチャン・バッハのコラールのアナリーゼで一日が始まる。日課?いつから?うん、随分と昔からさ。何年ぐらい続けているのかって?さあね、指折り数えても、うん、手の指、足の指、総動員しても到底足りないぐらいさ。 最…
昨日の話だ。朝の練習を終えて帰宅すると、あれ、新聞受けに伝票が入っているじゃないか。ああ、再配達をお願いしなくちゃと、まあ慣れたもんさ、居酒屋の予約に比べれば何てことないね。再配達受付先の電話番号はちゃんと伝票に書いてある。○○〇―9625、…
ここ数日、完全にこの干からびた頭を作曲という行為に突っ込んで過ごした。成果はあったのかって?ああ、意外な事に思っていた事ができたんだ。ほんの数分の曲、原稿用紙にして僅か数枚の小品さ。ただその数枚を書きつけただけの行為が、自身にとってはとて…
ようやく冬支度を終えた。大切なのは食材だけじゃない。衣と住、うん、そいつらも大事だよねってんで、早速近所のショッピングセンターに行って長袖のTシャツを三枚、運動靴を三足買ってきた。これがこの冬の間に着潰す、あるいは履き潰す全てだ。 それから…
原稿を書き終え、ようやく楽しみにしていた美術展に出掛ける事ができた。歌川国芳と月岡芳年の二人展だ。実は月岡芳年、うん、明治から幕末に掛けて活躍した絵師さ、こんなに人物の立ち姿を凛々しく、美しく描いた絵師はいないだろうね、その芳年の作品を直…
原稿書きなんぞにうつつを抜かしていたもんだから、ああ、十一月という一月が自分の中からすっぽりと抜け落ちてしまった。十一月といえば気候も良く、いつもならば作曲に集中できる月なんだが。いやいや、その十一月に作曲に没頭していた訳だろう?まあ、そ…
ここ数日、後頭部が痛む。どうやら腫れているようだ。まさか、脳腫瘍?・・・いえいえ、ただのおできです。おできってやつは、こちらが手を触れさえしなければ何ともないという、おとなしい性格なので問題ないが、踵にできたいくつものひび割れ、うん、こい…
十月の下旬にコンサートを一本こなした後、そのまま流れ込むように清書に入った。ほぼ一月ほど原稿に頭を突っ込んで暮らしたんだ。四章からなる作品を一つ。ああ、随分と疲れたね。何だかふらふらするね。 という訳で今は十二月のはずだが、あれれ、十二月っ…
この前の週末の事だ。一月ほど抜いていた酒を飲んだ。うん、知人に誘われたんだ。酒を飲んだのが一月振りなら、その知人と飲んだのはおよそ十年振りだ。連絡を貰った時はいささか面食らった。まさかこの、どこまでも影の薄い爺の事を思い出すやつがこの世の…
「しまった」と何度も握った拳で自分の膝を叩きながら顔を歪め、後悔に首を振り続けている。自分でも何故だか分からないが、ふと思いついて「富嶽三十六景」の画集を買ったんだ。これまで北斎といえば肉筆、そう思い上がった事を嘯きながら、この画集を顧み…
窓から外を眺めると、ああ、久々に朝霧が立っているじゃないか。窓を開け、素足でベランダに降り立ち、朝の冷え込みを直に肌で感じる。生まれ育った街ならば、うん、そこは坂の街で、高低差が激しく、複雑に入り組んだ地形をしていて、その地形が作る谷に沿…
あれ?何か変だぞと、ここ数日頭を捻りながら過ごした。いつにもまして頭がぼんやりしている。ついでに体が重い。何故って、うん、実は心拍数が50を切っていたんだ。徐脈とかいうやつさ。それで慌てて病院に駆け込んだ。最近病院を変わったばかり、その開…
詩人寺山修司に「若者よ、書を捨て街に出よう」というタイトルの著書があるが、うん、「街に出よう」、良い言葉だねえ。若者の心をぐりぐりと刺激するような言葉さ。「ピーギャン」という隠語がある。あまり好意的な意味では使われない。音楽家たちの間で使…
ガキの頃に観た「禁じられた遊び」という映画、そいつが何十年も経った今でも鮮明に記憶に残っている。南欧の強い光、その光がスクリーンから直接に溢れ出してくるような作品だった。その映像に寄り添うように流れていたギターの音、南欧の古曲からセバスチ…
朝っぱらから頭を抱えてうんうんと唸っている。何故?ああ、そいつは恥ずかしさからさ。自分の不明を、無知を、ともかくその存在そのものを大いに恥じているんだ。長年取り組んできたカタロニア古曲、その中にどうしても意味が分からない言葉があった。知人…
ここ数日、肩にぶら下げた荷物に嫌な重みを感じていた。思えば三年前の秋、最初に感じた体の違和感、それは妙に荷物が重いという事だった。それから秋、冬と通して肩に下げた鞄は次第に重みを増し、とうとう歩けなくなった私は病院に駆け込み、いや、駆ける…
台風。ともかくそいつが私の中に胡坐を掻いていた憂鬱とかいうやつを吹き飛ばしてくれたのかどうかは知らない、ともかく私は日帰りの小さな旅に出た。昨夜、散々暴れまくった台風のせいで、大幅に運行時刻の狂った電車に乗って北に向かったんだ。雨は昼近く…
くそ、いったい何だったんだ、今年の夏ってやつは。梅雨が明けて、自分でも驚くほどの量の原稿を書いた。よし、これでしばらくは作曲から離れて暮らすんだ。そうだ、新しい暮らしでも模索してみようかなどと、にやにやしながら寛ごうと思ったんだが、いやい…
随分と若い時、一緒に住んでいた女から誕生日のプレゼントは何が欲しいかと訊かれた事がある。元々、ほとんど物欲がない私は、何一つ欲しいものが思い浮かばず、口の中で意味のない言葉をぶつぶつと呟いた記憶がある。ああ、でも今なら欲しい物があるとはっ…
昨日の朝、起き抜けにカーテンを開いて驚いた。何だ、この空の色は?いやいや、ただの青空じゃないか。うん、久しぶりの晴天に、その抜けるような空の青さに驚いたんだ。このところずっと雨が続いていたからね。おいおい、なんと大袈裟な。ガルシア=マルケ…
随分と髪の毛もなくなってきたので、もうシャンプーなんてものもいらないんじゃあないだろうかと秘かに思っていたら、おお、とあるネット記事にシャンプーは毛髪を洗うためにあらず、頭皮を洗うためにあるものなりってな事が書いてあった。そうか、丁度シャ…
わが作曲の愛弟子Мちゃんが「先生、大丈夫・・・?」と呟くように言いながら、私の事をじっと見つめている。手には新聞紙、その新聞紙には太字のマジックで「鬱」という文字がいくつも書かれている。もちろん異様に癖の強い私の文字だ。 えっ?ああ、それね…