通信22-7 知人より鰻が届く

 昨日の話だ。朝の練習を終えて帰宅すると、あれ、新聞受けに伝票が入っているじゃないか。ああ、再配達をお願いしなくちゃと、まあ慣れたもんさ、居酒屋の予約に比べれば何てことないね。再配達受付先の電話番号はちゃんと伝票に書いてある。○○〇―9625、その9625という数字にルビを振るように「クロネコ」と書いてある。うううん、9625だぜ、クロネコじゃないやんクロニコじゃんと、そんな事をぶつぶつと呟きながら電話を掛けるのが常だ。あっ、でももしかすると東北の人とかにはクロニコの方がすっきりするんじゃないだろうか。ところでうちの近所に最近「ニケ猫」という屋号の小さいパン屋ができたんだが、ニケ猫って何?

 

 夕方になって再配達のリクエストにお応え下さった宅配会社のスタッフの方が荷物を運んできて下さった。寒い中、何度も申し訳ない。うん、いつものお姉さんだ。十年前、この街に引っ越して来たばかりの頃からずっとこの界隈を担当しているお姉さん、十年前は女子サッカー選手の澤穂希さんに似ていると思っていたが、最近は何となく間寛平氏の方に寄って来たなあなどと内心思いながらも、もちろん口には出さず、ぺこぺこと労を労いながら荷物を受け取る。

 

 送られてきた荷物は何かというと、おお、お歳暮の鰻だ。つくば市にお住いの松永浩史農学博士が毎年送って下さるんだ。そうか、もうそんな季節か。うふふ、しょうがないなあ、うふふ・・・などと含み笑いをし、そうさね、鰻に合うのはやはり日本酒だろうねえなどと嘯きながら草履を突っ掛け薄暮の街へと出掛ける。

 

 久しぶりに秋月城の前を通った。久しぶり?そうさ、普段はいつも通る道なんだが、最近、道路工事で通行止めになっていたんだ。そういえばこの秋月城、知り合いのМさんがお住まいなんだが、工事の間、登城、下城はどのようにしておられたんだろう?まあ、ともあれ年の瀬の折、どこもかしこも地面を掘り起こしていてうんざりだね。大丈夫かい?そのうちグレタさんに怒られるぞ。

 

 手書きの原稿、一日前にそいつをただ一本書いただけなんだが、ああ、驚くほど作曲が身近なものに思えてきたんだ。机の中を引っ掻き回し、ばらばらになっていた道具を搔き集めた。十年ぶりに仕事机の上にずらりと並べた愛用の道具をながめ、しばらくの間うっとりとする。製図用シャープペンシル、イレイサー定規、ノック式のイレイサー、雲型定規・・・、そういえば長年欲しかった製図板を買ってみようかな。うん、そんな事を考えているだけで何だか手が震えるほどどきどきするね。もしかしたら私は作曲するという行為が好きでたまらないんじゃないだろうか。幸い今年は暖冬だ。しばらくは街中を一杯に歩き回り、銀杏の実を拾い集めるみたいにさ、ああ、音符を拾い集めてやろうかと思っているんだ。

 

                                                                                                         2019. 12. 14.