2020-01-01から1年間の記事一覧

通信24-14 新しい眼鏡

作曲のペースが一気に速くなった。何故って、もちろん新しい眼鏡のお陰さ。うん、今の私、誰の目にも五線紙に向かって音符を書きつけているように見えるだろう。多分、十数年振りだね。目を悪くして、まったく紙に向かう事ができなかった一年、それ以降、こ…

通信24-13 ルネサンス・調性の確立 音楽史外伝vol.4 告知

ルネサンスのイメージ、うん、私ならばまず煌びやかさが浮かぶね。中世に対してルネサンスという時代区分が言われるが、底意地の悪い姑的に捉えるならば、中世というのが時代の名称なのに対して、ルネサンスは文芸運動、すなわち運動の名称という事になる。…

通信24-12 ウサギのように眠り続ける

ここ数日の事、酷い体調不良に喘いでいる。喘いでいる?ああ、良い言葉だねえ。ぜいぜい、はあはあ、吐く息もふいごのようです・・・、うん、今の自分の様子をよく表しているじゃあないか。 元々、今年の秋の入り口は、何となく体がおかしかったんだ。ともか…

音楽史外伝 vol 2 ~中世・グレゴリオ聖歌~補遺

今年の夏、具体的には2020年8月から、私にとっては初めての試み、「音楽について対話する」という事を始めた。きっかけは九州交響楽団でチェロ奏者として活躍しながら、同時に様々な企画に携わっている石原まりさんから勧めていただいた事にある。石原さんと…

通信24-10 新しい眼鏡が懐かしい風景を運んでくる

視力を矯正できる事がわかった。これまで、ずっと十年以上もほとんど手探り状態であらゆる作業をこなしてきたんだ。今、書いているこの文章だって、差別的なニュアンスがあるってんでマスコミから消えてしまった言葉、うん、「ブラインドタッチ」とかいいう…

通信24-9 太陽がいっぱい

相変わらずおかしな夢を見るもんだね。夢の中の私は、どこか知らない国で、見知らぬ男から住居の提供を受けていた。男は白人。たどたどしい会話が続いていたのは、相手が外国人だからだが、夢から醒めてみると果たして日本語で話していたのか、あちらさんの…

通信24-8 百円の出刃包丁

伝染病の襲来で数少ない収入を絶たれた私は、気を紛らわす事も兼ねてともかく趣味を持つ事にした。遠出する気力もなく、うん、電車やバスに乗る事すら真っ平だってんで、部屋に閉じこもっていてもできる趣味、ああ、そうだ、魚を捌く技を磨こう。たまたま最…

通信24-7 フィリピンのお嬢さんからチョコレートを買う

伝染病の影響で大いに収入が減った。思わずごくりと息を呑むほどに。といっても普通に生活していられるからまあいいか。実は今、自分がどれぐらいの収入を得ているのかは知らない。仕事のギャラはほとんどが銀行振り込みだし、出費もほとんどが銀行引き落と…

通信24-6

最近、暇な夜にはアマゾンの無料動画のラインアップを眺める事が多い。特に邦画。うん、何やら懐かしい映画が並んでいるんだ。今年亡くなった東陽一監督の佳作「サード」、まだ若い、いささか軽薄で無軌道な若者役が似合っていた水谷豊が主演を務めた「青春…

通信24-5 三ヶ月ぶりに楽器に手を触れる

伝染病騒ぎで毎日使っているスタジオが閉鎖になったのが三月の中頃。再びその扉が開いたのが六月のやはり中頃。つまり三か月ほども楽器に触れなかった事になる。若い頃ならいいさ。ああ、でもこの歳になって三か月の中断は致命的な事に思える。三か月も楽器…

通信24-4 玉羊羹のような水ぶくれ

そういえばおかしな春だった。今年の春は。伝染病が猛威をふるい・・・いやいや、世間様が言うほどに猛威をふるったって訳じゃない。ただ、人々はあまりに過剰に反応したんだ。元々、人は大騒ぎってのが大好きだからさ。街中いたるところで罵り合い。私が購…

通信24-3 人様のインスタグラムにお邪魔する

それにしてもどれぐらいの期間、文字を書く事から離れていたんだろう?四ヶ月?五ヵ月?その間何をしていたのかって?うん、季節外れの冬眠さ。伝染病でこの国がひっくり返りそうになったのが確か三月から四月にかけて。まさに大騒ぎ。インターネットも大賑…

通信24-2 病院をはしごした

初めて病院とやらをはしごした。内科と眼科。腹が減ったら食堂に出向くように、体が壊れれば病院に行く、そんな当たり前の事にようやく気付いたんだ。五線紙にへばりついている間、どんどん目が翳み続け、もはや譜面を読む事も書く事もままならないと思い、…

通信24-1 えっ?もう秋になったのかい?

枕の上にどさりと置かれた自分の頭を持ち上げようとすると、思いの外そいつは重く感じられた。おいおい、私の頭、そいつは今、空っぽの筈だぜ。明け方近く、ここ数週間取っ組み合っていた新曲を書き終えたんだ。三連作の二曲目。二曲目?ああ、あと一曲残っ…

通信23-15 もうハンバーガーを食べなくてもいいんだ

ハンバーガー屋の大きな窓、その窓から惜し気もなく降り注いでくる明るい陽射し。そのお陰でようやく校正が終わった。ほっとしている今、正直に思っているのは、うん、もうハンバーガーを食べなくても済むという事だ。数日間、毎朝、そいつを食べ続けたのだ…

通信23-12 ハンバーガー屋で過ごす朝

仕事を終えた後の、何か大切な物を置き忘れてしまったかのような妙ちくりんな不安も次第に薄れてきて、うん、いつもの薄ぼんやりした自分が戻ってきた。ここ数日は、すっかり疲れ果てて、使い古された古雑巾のような自分の体に鞭打つように、朝から散歩に出…

通信23-11 函館ってどんな街なんだろう

春嵐?いやいや、そう呼ぶのはあまりに大袈裟だろう。いきなりの驟雨が窓を打ち、強い風があたりを吹き抜ける。うん、三寒四温の三寒ってな感じだね。一昨日から冷え込みが始まったから、そうさ、明日からはまた四温に入るんだろうさ。 昨日、原稿を上げてか…

通信23-10 タケノコみたいにむずむずと

酷い憂鬱のど真ん中にいる。昨日、ようやく新作を書き終えたんだ。その前、最後に本気で作曲をしたのはいつだっただろう。よく思い出せないが、多分2004年だか2005年だか、それぐらいだったんじゃないだろうか。それからずっとリハビリと称して小さな曲をぽ…

通信23-9 まずは音から逃げる事だ

これまでほとんどの曲を青藍山の山奥か、平戸の漁村の中にある仕事部屋で書いてきた。今回、自分が普段暮らしている部屋で作曲しようと試みているんだが、これは思ったより随分と大変な事だと改めて感じている。 何が大変かって、うん、まずは自分の中に灰塵…

通信23-8 清書にはいりまあす

仕事場の閉鎖が延長になったのを機に、新しい連作集をと思い立ち、さくさくとスケッチを取り始めた私だが、おいおい、ちょっと待てよ。それ以前に絶対にやらなきゃあならない事があるだろう。そうさ、「ホルンとチェロとピアノの為の三重奏」、いい加減そい…

通信23-7 おお つげ義春さんお元気そうじゃあないか

先日、たまたま立ち寄った古本市で花輪和一の「御伽草子」という漫画を買った。何と言うか・・・何が描いてあるのかよく分からなかったり、あまりの投げやりなおちに、描かれたやつらの底抜けな性格の悪さに、「ひでえ」などと思わず呟きながらも、げらげら…

通信23-6 閉鎖は続くよ どこまでも

四月一日より稼働すると知らされていたスタジオが、二週間ほど閉鎖を延期するらしいという情報が流れて来た。急いでスタジオのホームページを開いてみると、ああ、確かにそのように告知されている。ううううんと情けない唸り声を立ててパソコンを閉じ、この…

通信23-5 こんな時は「デカメロン」など読み耽りたい

ようやく百枚ほどの原稿を書き上げた。酷く目が疲れた。ああ、私の眼球は五分の一ほどに縮んでいるんじゃないだろうか。それに何だか指もぐにゃぐにゃになってしまった。そういえばちょいと怪我した左手が、どらえもんのように真ん丸に腫れ上がり、まる一日…

通信23-4 幽霊の正体見たり枯れ尾花

朝、突然ご近所にお住いのМさんからメールをいただいた。多分通勤の途中でその風景を目にされたんだろうね、いつも渡る橋の下にパトカーや消防車が群がっているとの事。それでは眠気覚ましに早速行ってみますという返信をしたが、うん、どうやらМさん、この…

通信23-3 新しい協奏曲に没頭する好機がやって来た

平和とまどろみの象徴のような朝日が燦々と窓から注がれてくる。コロナといえばあらゆる良きものの代名詞だったはずだが、まったく太陽もとんだとばっちりを受けているってなもんだ。 朝からぼんやりとこんな事を考えながら過ごしているのは、ああ、とうとう…

通信23-2 続 燕尾服の思い出

あれこれ燕尾服の事など考えているうちに、ふと、おかしな一日の事を思い出した。音楽家ってのはだらしないなあ、などと思う事がたびたびあるが、特にその事を強く感じさせる思い出の一日があるんだ。 まだ、私が老人ではない、多分三十代前半だったと思う。…

通信23-1 燕尾服の記憶

コロナ禍のお陰ですっかり暇になった某君がいきなり訪ねて来た。季節外れの夏休みってな感じで毎日すごしているらしいが、やはり生活の事が大いに気になっているのだろう、夏休みの宿題に追い詰められたガキのような憂鬱な表情が、ちらちらと会話の合間に覗…

通信22-41 ああ、文章を書かなくちゃ

陽射しは汗ばむほど暖かいが、嵐のように風が吹き荒れて、春になった、のだと思う。それにしてもいつの間にか消え去った冬、今年のその冬は随分と迫力のないぼうっとした季節だった。ここ数年、毎年冬が私の周りの誰かを掻っ攫っていった。そろそろ、この私…

通信22-40 リハビリは続く

リハビリは続く。ここ数日はひたすらチェロという楽器のために重音を書き続けた。重音?うん、ヴァイオリンだのチェロだの、ああいう楽器は折角四本も弦がついているんだから、数本の弦を同時に鳴らして和音を奏でないと勿体ないじゃあないかね。セバスチャ…

通信22-39 ベートーヴェンは雨戸にも音符を書いたらしい

久々にいつもの朝が戻ってきた。いつもの朝?うん、寝ぼけまなこで珈琲を啜りながらバッハのコラールと戯れる朝さ。これまで何十年もの間、勉強しているという感覚で読み込んでいたバッハの譜面だけど、最近はただただそれらに触れるのが楽しくてしょうがな…