通信24-1 えっ?もう秋になったのかい?

 

 枕の上にどさりと置かれた自分の頭を持ち上げようとすると、思いの外そいつは重く感じられた。おいおい、私の頭、そいつは今、空っぽの筈だぜ。明け方近く、ここ数週間取っ組み合っていた新曲を書き終えたんだ。三連作の二曲目。二曲目?ああ、あと一曲残っているのか、いやいや、ともあれ今は休もう。何しろ紙に引かれた五本の線、そいつがよく見えていないんだ。六線?四線?いや、ぐにゃりと曲がった曲線に見えるぜ。

 

 いつの間にか足元に畳んで置いていた掛け布団に包まっていた。窓から入ってくる朝の冷気は、うん、すっかり秋のものじゃあないか。そうか、秋になってしまっていたのか。

 

 今回はいささかしくじった。このところ月に一度の割合で知人のインスタグラムとやらにお邪魔して、そこで思い切り与太話をする事になっている。そのインスタライブの日が、清書の中日に入り込んでしまった。うん、作曲が思ったより長引いたのさ。それですっかり心身ともに乱れてしまった。

 

 さあ、久々に文章でも書こうじゃあないかとパソコンを立ち上げたその時の元気は、ものの数分と経たないうちにベランダでうなだれている朝顔のように萎れてしまった。この体調じゃとてもだらだらと長い文章を書けるような気がしないね、などと必要の無い言い訳をしてみる。誰に向かって?もちろん自分に向かってさ。長い文章が書けない?ああ、良い事じゃないか。もういい加減、沈黙は金という諺を実感しても良いお年頃さ。

 

 さあ、スタジオに入らなきゃあならない時間だ。日々の練習、うん、そいつは欠かさない。何故?今更何の必要があって楽器の練習なんかしているんだ?いや、特に必要なんかないさ。パンチドランカーになったボクサーは、ゴングの音を聞くと全く無意識にふらふらとリングの中央に向かって歩き出すらしい。再びぼこぼこに殴られるために。うん、そんなもんさね。

 

                      2020.  9. 30.