通信28-19 一人じゃないって、素敵な事ね

 いつの間にか一月以上も文章を書く事をさぼっていた。その間、何をしていたかというと、うん、汗だくになって譜面を書いていたんだ。サキソフォーン一本で演奏できるような小品を書くために、そのネタ、そいつを必死になって搔き集め、そのネタに肉を付け、色を塗るように譜面に落とす。ああ、それにしてもサキソフォーン一本、この不自由な小道具、どうやって一つの世界観を表現すればいいのだろうか。

 

 あれやこれやと四苦八苦しているうちに、おお、そうだ、私には心の友がいるじゃあないか。ふと思い出した同士の存在、今は九州交響楽団という立派なオーケストラでファゴットを吹いている埜口浩之君、彼の事を思い出して、早速連絡を取ってみると、うん、二つ返事ってやつさ、一緒に演奏してくれるというんだ。とっても多忙な男だ。なかなかスケジュールが決まらない。健康上の理由で、私自身は今夏一杯でサキソフォーンの演奏から足を洗う事にしている。夏はスケジュールが一杯に詰まっているという彼の事だが、神風でも吹いてきて、何とか一日、一緒に演奏できる日がくると自分に言い聞かせながら、ファゴットとサキソフォーンのための二重奏の譜面を作った。昔、永遠のアイドル、天地真理さんが「一人じゃないって、素敵な事ね」などとお歌いになっていたが、ああ、二重奏の譜面を書くのがこんなに楽しいとは。

 

 そういえば今春、帰省中の元弟子である今坂琉那君と一緒に作った動画がいつの間にかユーチューブに上がっていた。出来はどうかって?ううううん、自分ではよくわからないが、それでもかつての弟子が随分と腕を上げ、すっかり大人の演奏ができるようになった事を妙に感慨深く感じている。バッハの無伴奏組曲、その中の二曲目「アルマンド」を二人で演奏してみた。どこまでも陰影の深いこの曲、極力立体的な音響の像が作れるようにと精一杯頑張って譜面を作り、演奏をしてみた。さて、皆さまのお耳にはどのように聴こえるのだろうか。どうか御笑聴いただければとても嬉しい。

https://youtu.be/__Pvi8jkcws