ここ数日、大いに自分を悩ませてくれた低体温からようやく抜け出した。数日前に突然震えるほどの寒さの中に放り込まれたんだ。風邪?いや、そんな感じではない。血液の巡りが悪く、体温がずんずん下がる、うん、強いて言えばそんな感じかね。もちろん思い当たる節はある。臓器が一個、壊れかけているんだ。血の巡りを左右する大切なやつがね。

 

 たまたま人様のお家へお邪魔している時だった。これまで感じた事がないような空腹を感じ、あれれ、お腹がというよりも、何だか体全体が空っぽになった気がするぞ。もしかしたらこのまま倒れてしまうんじゃないだろうな。人様のお家から、担架に乗せられ運び出されるところを思い浮かべ肝を冷やす。しかもその家にはうるさい犬がいるんだ。担架を追いかけながらわんわんんと吠える犬の鳴き声を想像すると居ても立ってもいられなくなり、這う這うの体で逃げ帰った。

 

 ああ、ともあれ昨夜の事、突然体が内側からほかほかと温まり出したんだ。よし、これでとりあえずは大丈夫だろう。そうなると現金なもので、早速浮かれてゴールデンウィークをどう過ごそうかなどと考え出した。いいねえ、黄金週間。神仏の前に人は皆平等だ。私のようなくたばり損ないにも黄金色に輝く一週間はやって来る。というんで夏の準備さ。玄関にゴム草履をざっと並べてみる。ああ、戸外が一気に近づくような気がするね。あの足を包み込む袋や、拘束具のような靴ともしばしのお別れだ。草履は私にとって、履物というよりは乗り物という感じなんだ。さあ、今日はどの草履に乗ってどこへ出かけようか。今日は黄砂警報が出ている。よし、黄色い大気に分け入って行くんだ。

 

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