通信28-14 犬のようにばたばたと走り回った日々

ここ数年にしては珍しく、随分とばたばたと駆けまわる日々を送った。体力的にはしんどかったが、だからといって楽しくなかったという訳じゃあない。外に出て、未知の人たちと出会うとそれなりに元気がでるもんだと妙に感心したりもしている。

 

 そういえばこの前の週末には人様の前でピアノを弾いた。もう何十年も前の事、ちょいとした出来事から、もう人前ではピアノは弾かないと固く誓ったんだが、とうとうその誓いを破ってピアノを弾いてしまった。実際に鍵盤に触れると次から次に楽想が湧いて来て、うん、止まらなくなるってのはこの事だね。

 

 ソロでに十分、コンテンポラリーダンスの方々と即興で四十分ほどの枠をいただき、だんだん年齢を逆に遡ってゆくように、うん、若返ってゆくってな感じだね、存分に楽しんだ。に十分ほどのソロを終えると、そこに居合わせた見知らぬお二人、ベース弾きとドラム叩きのお二人、名前も名乗る前にそのお二人といきなり合わせに流れ込んだ。即興演奏などと格好つけてみても、所詮はフリートーク、音を使って好き勝手にお喋りを垂れ流すようなもので、話好きの私としてはまったく苦にならない。ただ、聴いて下さっている方々が退屈されたいないないだろうかという不安がちょいと頭を掠める事もあったが、うん、やはり始まった以上は止められないってんで、ひたすらゴールを目指して駆け抜けたんだ。

 

 数年前に悪くした心臓が、小刻みに悪くなってゆき、とりあえず今夏までにサキソフォーンを止める事にした。それでご近所にお住いの親切なお姉さんから、動画を残しておかないかというご提案にお応えして、小噺みたいな五分ほどの演奏を繰り返している。それにしても振り返るとサキソフォーン、この妖しい楽器にちょいと時間を取られ過ぎたと思う。作曲は仕事、サキソフォーンの演奏はあくまで趣味と線を引いていたはずだが、やはり趣味ってものはどうしても過剰にのめり込んでしまうもんだね。さあ、きちんと反省し、このぐにゃりとひん曲がったラッパを押し入れの奥に仕舞いこんで、余生を作曲にぶち込んでやろうと決意を新たにした、うん、そんな数日だったんだ。

https://youtu.be/9HMgdWLw_4o