通信28-9 ウルトラマンのように

 粛々と、淡々と、静かに、我をいうものを一切出さず、作曲にも演奏にも取り組みたいと思っている。自分ごときが何をせずとも、音楽は、たとえそれが小さな歌であっても、そこにあるだけで一つの世界を余すことなく表現しているものだと、ようやく分かってきた気がする。この齢になって。うん、体力がなくなって。これまでは有り余る体力と自我を音の中にぶち込む事ばかりを考えていたんだ。

 

 でも、実をいうと演奏に関しては、やはりもう少し体力が欲しい。演奏、そいつについては三分前後、今の私にはそれが限界だ。三分を過ぎたあたりから、妙に息苦しくなり、集中力が一気に衰えるんだ。ああ、三分が限界。

 

 そういえば子供の頃、三分しか戦えないヒーローがいたな。ウルトラマンというやつ。三分近くなると胸の灯りがぴこぴこと点滅を始め、「じゅわ」だか「じょわ」だかともかく奇声を上げ飛び去っていくやつ。あれって事件が解決する前に、三分経てば自動的に飛んでいくんだっけ。なんだか散らかしっぱなしでどこかへいってしまう子供みたい。何となく残念なやつという気がするね。

 

 そういえば「ウルトラ」という言葉には確か、あまり肯定的なニュアンスはなかったように思うが。「非常識」だとか、「飛んでもない」だとか、ともかく「ろくでもない」というような意味合いがあったんじゃないかな。だとすればウルトラマンとは、「非常識な野郎」だとか「とんでもないやつ」とかいうような感じかね。ああ、でも悪くないね。この私こそがウルトラマンさ。うん、これからは音楽界のウルトラマンとでも名乗る事にしようかな。

https://youtu.be/Nkmd3N75sBo

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