通信20-15 ぐだぐだしているうちにたちまち1702文字に

 何となく浮かれた気分で過ごしているのは、うん、DTМの準備が整ったからさ。いくつかのパソコンソフトをインストールして、さあ、これからだ、そいつらを関連付けしなきゃあならない。それが嫌で、何となくぐずぐずと先延ばしにしていたんだ。いや、そいつはいけない。ともかく「いつやるの?」とかいう、某予備校の教師の言葉を思い出しながら、パソコンに向かったんだ。あれれ、あっさりできてしまったじゃないか。麻雀放浪記という映画の中で、天和を上がった高品格さん扮する「出目徳」のとぼけた台詞、「おやおや、こいつは驚いた、上がってるよ」という台詞、何となくそう呟いてみたい気になったんだ。


 実際取り組むまでは、憂鬱な想像ばかりをしていた。パソコンを立ち上げると、どろんという煙と共に、パソコンの神様までが一緒に立ち上がり、間抜けな私が何か操作を一つ間違う毎に、杖を振り上げてごつんと一発、その杖、もちろんスタンガンが仕込まれた凄いやつさ、そうして瘤だらけの凸凹頭を左右にひねりながら、背中を丸めてパソコンに取っ組み合う自分の姿を思い浮かべていたのさ。


 まあ、ともかく用意はできた。後は思いのままに音を打ち込むだけだ。しばらく浮かれて、作業を楽しんでいると、あれれ、何だか音が小さくなってきたぞ、という間に、その小さく縮こまった音がぽつぽつと欠けだした。ん?何なんだこれは?いよいよ、パソコンの神様の出現か?ともかくあちこちといじってみる。


 設定を調べてみると、開いたダイアログボックスの中に何やら不吉な英語の文章が。要するに、あなたがお使いのキーボードはこのソフトには合っていませんとかいうような事を言っているんだ。そこにある「currently」という言葉、どう解釈すればいいんだろう?「惜しい、ちょっと前までは使えたのに。残念だったねえ」というような意味だろうか、それとも「とりあえず今はまだ駄目だけど、でもねえ、そのうち使えるようになるかもしれないよ、うふふ」とかいう意味だろうか?うううん、いや、今はそんな悠長な事を言っている場合じゃあない。もう、私には時間がないんだ。ほら、窓の外を見てみな。あの駐車場の隅に佇んでいる黒い影、あれは私の事を待っている死神かもしれないぜ。


 という訳で、明日は鍼治療に出かけるついでに楽器屋をうろうろと探し回らなけりゃあならない。それにしても自分が使っているソフトとの相性が良いキーボード、そんなもんどうやって見つければいいんだろう?店員に尋ねる?うん、でもこの手の商品を扱っている店の店員ってうるさいんだよね。自分の知識のありったけを、ほんの数分間ですべて喋り尽くそうとするんだ。ほらほら七色の唾が飛んでくるぜ。


 それにしても最近、すこしブログの記事が長くなってないかい。前のブログでは一つの記事につき、1500字以上1700字以内と決めていたはずだぜ。記事が長くなる。うん、これは多分老化だろうね。同じ事をくどくどと話し続ける。特に内容などどこにもないのにさ。昔は、自分が太平洋戦争だか、日露戦争だか、応仁の乱だかしらないが、ともかく戦争で立てた手柄話を、くりかえし目の前にいる誰にでも、うん、相手が誰であろうと一切お構いなし、目の前に人がいない時にはたまたま通り掛かった犬猫相手にまで離し掛けている、そんな爺が巷には溢れていたんだ。


 ともかくこれからは簡潔を宗としよう。人と会った時も言葉はなるべく手短に。若者の言をも憶えてみようかね。「あざーす」だとか、「おはー」だとか、「あけおめ」だとかさ。そういえば去年の正月、還暦を疾うに過ぎたヴァイオリン弾きのSさんに、ばったり道で会った時、いきなり「あけおめ、ことよろ」と言われて相変わらず変な婆さんだなあと思ったんだ。いやいや、あちらさんこそが真っ当さ。ぐだぐだと涎だか、言葉だか分からないものを、口の端から垂れ流す私の方こそが変てこなのだと大いに反省する。とここで画面の下を見ると1599文字、よし、オーケーだ、などと余計な事を付け加えるから、ほらほら、たちまち1649文字に、ほらまたそれが余計だってってんで1670文字に・・・、ねっ、これがぐだぐだの現場って訳さ。

 

                           2019. 5. 22.