通信28-15 ばったもんのドゥドゥクという楽器に振り回される

 アルメニアの民族楽器ドゥドゥク、そいつに魅かれてもう十年以上になる。きっかけはトゥバの歌姫、サインホ・ナムチラクのCDさ。サインホの歌声に風のように寄り添う不思議な音色、うん、まさに度肝を抜かれたってのはこの事だ。

 

 半年ほど前にある民族楽器を扱うサイトで、このドゥドゥクが売られている事を知った。えっ?こんなに安いの?さあってなもんで、ばたばたと手続きを済ませ、一週間ほどで送られてきたドゥドゥク、そいつを口に咥え、うん、良い音じゃあないかとにやにやしながら音階に挑むも、あれ?どうしても正確な音程が取れない。いや、正確な音程なんてレベルじゃあないぞ。とんでもない増音程ができるじゃないか。そもそも普通に吹くとオクターブが長9度になるんだ。ううううん、これこそが民族楽器の奥義なのかと思い、吹き込む息の角度、強さ、スピード、ついでに咽頭の形等々を変化させ、どうにかそれらしく音階は吹けるようになったものの、本当にこんなもんで実際の演奏に繋がるのかね、などと大きく首を傾げ、今度は傾げ過ぎた首を逆の方向にも傾げ、とうとう不貞腐れてそのドゥドゥク、押し入れに仕舞い込んでしまった。

 

 数日前、偶然「ドゥドゥクjapan」というサイトを見つけ、目を、耳を、皿のようにしていくつもの動画を見ていると、ああ、どうやら私が買ったドゥドゥクは観光客相手のお土産物だったようだ。指孔の間隔も適当に開けてあるという専門の先生の言葉に、ひどく落胆しつつ、自分の間抜けさが滑稽でたまらなくなり、声を出して笑った。

 

 さて、どうしよう。単に指孔の問題なら、正しい位置に向けて穴を斜めに削り込み、余分な部分をパテで埋めるという方法があるが・・・、いやいや、いい加減に貧乏臭い事はやめ、「ドゥドゥクjapan」様に連絡して正しい楽器をお売り下さるようお願いする、うん、それがまっとうな大人のやり方だろうね。

 

https://youtu.be/0MvQ1CrqSPQ