通信28-8 旧友交歓

昨夜は旧友と飲んだ。合うのは十数年振り、十数年前に一度顔を見たその前にあったのはさらに二十数年前だろうか。七夕様もびっくりするぐらいの御無沙汰ぶりだ。それでも一旦顔を合わせると、何の遠慮もなく、酒をぐいぐい飲み、好き勝手な事を喋りまくる、…

通信28-7 汚れた手癖をなくしてしまいたい

新しい眼鏡がくすみきった私の日常に明るい光と、微かなこめかみの痛みを運んできた。うん、新しいが故につるの部分の締め込みがきついんだ。ともあれ短くはあるが、言葉と戯れる時間が戻って来た事は嬉しい。 ここ数日は、誰もが知っているような歌をサキソ…

通信28-6 どうかあと一つだけでもいいから

最近はあまり会う機会のなくなった、古くから付き合いのある友人とばったりあった。随分しょんぼりしているけど、どうしたのかな?話を聞くと、失明の危機に瀕しているそうで、毎回治療の度に一本五万円もする、しかもむちゃくちゃに痛い注射を打たれるそう…

通信28-5 新しい眼鏡が完成するついでに動画を撮っていただく

youtu.be まとまった原稿料が入ったらやろうと思っていた事ランキングの一位、それは眼鏡を新しく作り直す事だった。そして先日、有難く原稿料を受け取った。さあってんで、早起きして向かったのは近所の眼科さ。市内でも評判の眼科で、ともかく待ち時間が長…

通信28-4 昔、森安なおやという漫画家がいた

少女漫画の事をあれこれ考えているうちにふと思い出したことがある。まだ十代の私は、上京し椎名町というところに四畳半のアパートを借りて住んでいた。池袋で夜中まで酒を飲んでも、ふらふらと歩いているといつの間にか帰り着いているという都心に近い街に…

通信28-3 少女漫画について その3

私にとっての少女漫画の伝道者である妹ともすっかり会う機会がなくなり、少女漫画からも遠ざかってしまった私ではあったが、ある時知り合った少女漫画マニアのT君に色々と教えてもらった。 T君によると太刀掛秀子先生の「花ぶらんこ揺れて」という作品は日本…

通信28-2 少女漫画の思い出 その2

私が子供の頃、少女漫画の多くは男の作家が描いていたように思う。今となってはあまりにも有名な作家たち、ランダムに名前を挙げるならば手塚治虫先生、赤塚不二夫先生、石ノ森章太郎先生、楳図かずお先生・・・、ともかく漫画の書き手というのは男性で、彼…

通信28-1 少女漫画の思い出 その1

国中が浮かれまくる年末年始をほぼ布団の中で過ごした。さあ、いよいよ布団の国の王様になりつつあるって訳だ。そんな年明け、近所にお住いのお姉さんが漫画を持ってきて下さった。お見舞い?うん、何でもいいさ。それにしても病人に漫画、なかなかの組み合…

通信27-27 今朝も元気に目を覚ました

おお、今朝は久々に頭痛がないじゃないか。いったい何日ぶりだろう。うん、頭痛といっても正確には眼痛なんだけどね。ここ最近は眼痛のやつが進化を遂げたらしく、毎日飽きもせずやってくるんだ。といってもこちらも黙って手を拱いているってな訳じゃない。…

通信27-26 ごみの中から現れた果実

これを腐れ縁というのではないだろうかと、忘れた頃にふとどこかでばったり出会う旧友のT君、彼から昨夜、久々に電話を貰った。昨日の私の駄文を読んだのだが、ごみ箱に棲むホームレスのくだりは、紀田順一朗「東京の下層社会」(ちくま学芸文庫)に引用され…

通信27-25 いくら貧しい私でもごみ箱の中に棲むのはちょっと

呆け防止のためにこのブログを続けているんだが、特に書きたい事なんてないんだよねえ、と知人に打ち明けると、「それなら時事系のネタを書けばいいじゃないですか」と言われた。えっ、爺系?・・・うん、時事系ね。爺系のネタなら常に書いている。 ふうん、…

通信27-24 もうすぐご飯が炊き上がりますよ

数日前にべとべとなご飯を炊いた。いや、もちろん好き好んでそんなご飯を炊いた訳じゃあない。ともかくじっとりと湿気を含んだご飯が炊飯器の内釜に、これでもかというほどこびりついていた。更にそのまま保温にせず、夕方すっかり冷めきったご飯を茶碗に装…

通信27-23 実はエアコンってやつは部屋を暖める事もできるんだ

部屋の中が少し肌寒く感じた。ふと思いつきエアコンの暖房を入れてみる。あれ、思ったより随分と暖かいじゃないか。私は生まれてこのかた、エアコンの暖房なんてほとんど効かないようなものだと思い込んでいた。 七月の終わりだった。今年はひどい猛暑で、連…

通信27-22 いったい何を懐かしもうっていうんだい

今回はGの事を書くつもりなどなかった。かつて住んだ、自分が最も好きな街で起こった様々な事、うん、楽しかった事も、頭に来る事も、何でもいいさと、もかくそんな事を書きたかったんだ。でも、どうしてもこの時期の事を書くと、ずるずると引き寄せられるよ…

通信27-21 あまりに突然な

そしてそれから、それから?うん、それからすっかり浮かれ切った私たちは石油ストーブの天板の上に直接網を置き、その網の上に銀杏をぶちまけた。香ばしく焼けた銀杏の実に塩をまぶし、そいつをばくばくと食べながら他愛ない話をだらだらと続け、馬鹿みたい…

通信27-20 あまりに突然の

家主とのすったもんだを繰り返しながらも、いつの間にかそれが当たり前の事となりつつあった。うん、大した事じゃない。トムとジェリーが毎日毎日飽きもせず喧嘩を繰り返しているようなものさ。でもその年の秋が深まった頃、家主の姿を見掛ける事がなくなっ…

通信27-19 我が家にキラーがやって来た

別に酒飲みだけじゃなかった。この街に住む変な奴は。時折見掛けた黒装束に身を包んだ、ううううん、そうだねえ、紳士然としていると言ってもいいのだろうか、ともかく不思議な行動をとる中年男がいたんだ。黒装束といっても、私みたいによれよれの黒いTシャ…

通信27-18 酒に擦り切れた男を見た

さあこの街での酒飲みの総大将といえば、うん、そう呼ばれるに相応しい奴がいたんだ。名前は知らない。ある日、近くの商店街を歩いていると叫び声が聞こえた。ん?と思い声の方を見遣ると、あれ、人が道に寝ているじゃないか。一杯飲み屋の前だ。飲み屋の前…

通信27-17 12時だよ 全員集合

それにしても酒飲みってのは酔っ払うと何だって外に出たがるんだろうね。やはり独りで飲むのは寂しいのかねえ。私が棲みついた路地に棲む酔っ払いたちも例外じゃなかった。もちろん寒い時はそうじゃない、でもちらほらと暖かくなると、ほら、よろよろとおぼ…

通信27-16 初めてアルツハイマーの人と話をする

確かに家主は一人暮らしの矍鑠とした老婦人だった。しかし思い出してみると、入居の御挨拶をしたのは家主の娘さんらしき人、家主である老婦人は娘さんの背後でにこにこと穏かな笑みを浮かべながら我々の言葉に相槌を打つだけだった。その家主と初めて言葉を…

通信27-15 力士たちに風呂で囲まれた思い出

街中に変な髪型をした大男たちが溢れていると思ったら、そうか、もう九州場所の季節なんだ。秋らしい澄んだ青空と、乾いた空気に誘われて、昔住んだ街の方へと足を伸ばしてみた。今はその面影を失いつつあるが、かつては古い学生街だったその街へ潜り込んだ…

通信27-14 ああ、E君にお酒を送らなければ

ここ一年ほど一緒に音楽理論の勉強をしているTさん、勉強の一区切りとして数か月掛けて取り組んでいた編曲が完成した。ならばそいつを実際に音にしてみよう。ついでに録音して記録に残しておこうってんで、昨日は昼中スタジオにこもってせっせせっせと事に励…

通信27-13 夏の思い出

ぼんやりと親指でもしゃぶりながら、あの頃の自分は何していたっけ?などと考えてみると、様々な記憶がじわじわと蘇ってくる。十五年ほども前に作られた、かろうじてネット上に取り扱い説明書が残っているような古いヴィデオカメラを買い込み、動画動画とは…

通信27-12 赤豚ってどんな味がするんだろう

前回のブログで遺影について書いたりしたものだから、読んでくれた知人から「暗い気分になるような事を書かないで欲しい」などという連絡をいただいた。それは申し訳ない。やはり「遺影」という言葉がよくないのか。ならばいっそカタカナで「イエイ」と書い…

通信27-11 楽しい動画を撮りたいな

それにしても眩暈が酷い。この眩暈ってやつはとことん人を臆病にするんだ。特に私のような見栄っ張りは道端で倒れるのが怖くて、ちょいと近所に出掛けるのにも覚悟ってやつが要るんだ。そういえば最近ある人から有難いお手紙をいただき、是非近々酒でも、お…

通信27-10 年中行事を失う

ホールを出ると暗い空を見上げ、頬を掠める冷たい風に、もう手が届くところまで冬が来ていると実感する。毎年、この時期になると楽しみにしていた、自分にとって年中行事のようなコンサート、福岡室内合唱団のコンサート、そいつに今年も出掛けた。 伝染病の…

通信27-9 譜面を書くという事は

去年今頃、自分が何をしていたか、もちろんそんな事とんと思い出せない。何しろ引退して引き籠っている年寄りには曜日ってもんが無いんだ。週一で社交ダンスの会や、囲碁クラブなどに出掛ける習慣でもあれば、少しは生活のサイクルってのができるのかもしれ…

通信27-8 暇潰しの日々が始まる

私はその筋の専門家ではないので原因はさっぱり分からないが、ともかく毎日体調が悪い。昼から原稿を書き続け、ふと部屋の中に夕闇がじわりと染み入ってきた頃、ああ、今日もやってしまったと、そう、弱った眼球をついつい酷使してしまった事を後悔し、目を…

通信27-7 布団の中でくるくると回り続けた

童謡「おなかのへるうた」は「おなかと背中が、くっつくぞ」という文言で締められるが、昨日の私は「背中と布団がくっつくぞ」という状態で半日を過ごした。いつもの通りにスタジオに入って、二時間ほど原稿用紙に向かい、さらに二時間、能天気な音でラッパ…

通信27-6 頭に残る嫌な音

疲れが全く取れない。作曲呆け?うん、ともかくそういうものからなかなか立ち直れないでいる。翳み目、その目を使って何かをじっと見つめると、いててて、たちまち眼球が激痛に包まれるんだ。おまけに平衡感覚がおかしい。便所に行くのにもふらふら、ああ、…