2020-03-01から1ヶ月間の記事一覧

通信23-6 閉鎖は続くよ どこまでも

四月一日より稼働すると知らされていたスタジオが、二週間ほど閉鎖を延期するらしいという情報が流れて来た。急いでスタジオのホームページを開いてみると、ああ、確かにそのように告知されている。ううううんと情けない唸り声を立ててパソコンを閉じ、この…

通信23-5 こんな時は「デカメロン」など読み耽りたい

ようやく百枚ほどの原稿を書き上げた。酷く目が疲れた。ああ、私の眼球は五分の一ほどに縮んでいるんじゃないだろうか。それに何だか指もぐにゃぐにゃになってしまった。そういえばちょいと怪我した左手が、どらえもんのように真ん丸に腫れ上がり、まる一日…

通信23-4 幽霊の正体見たり枯れ尾花

朝、突然ご近所にお住いのМさんからメールをいただいた。多分通勤の途中でその風景を目にされたんだろうね、いつも渡る橋の下にパトカーや消防車が群がっているとの事。それでは眠気覚ましに早速行ってみますという返信をしたが、うん、どうやらМさん、この…

通信23-3 新しい協奏曲に没頭する好機がやって来た

平和とまどろみの象徴のような朝日が燦々と窓から注がれてくる。コロナといえばあらゆる良きものの代名詞だったはずだが、まったく太陽もとんだとばっちりを受けているってなもんだ。 朝からぼんやりとこんな事を考えながら過ごしているのは、ああ、とうとう…

通信23-2 続 燕尾服の思い出

あれこれ燕尾服の事など考えているうちに、ふと、おかしな一日の事を思い出した。音楽家ってのはだらしないなあ、などと思う事がたびたびあるが、特にその事を強く感じさせる思い出の一日があるんだ。 まだ、私が老人ではない、多分三十代前半だったと思う。…

通信23-1 燕尾服の記憶

コロナ禍のお陰ですっかり暇になった某君がいきなり訪ねて来た。季節外れの夏休みってな感じで毎日すごしているらしいが、やはり生活の事が大いに気になっているのだろう、夏休みの宿題に追い詰められたガキのような憂鬱な表情が、ちらちらと会話の合間に覗…

通信22-41 ああ、文章を書かなくちゃ

陽射しは汗ばむほど暖かいが、嵐のように風が吹き荒れて、春になった、のだと思う。それにしてもいつの間にか消え去った冬、今年のその冬は随分と迫力のないぼうっとした季節だった。ここ数年、毎年冬が私の周りの誰かを掻っ攫っていった。そろそろ、この私…

通信22-40 リハビリは続く

リハビリは続く。ここ数日はひたすらチェロという楽器のために重音を書き続けた。重音?うん、ヴァイオリンだのチェロだの、ああいう楽器は折角四本も弦がついているんだから、数本の弦を同時に鳴らして和音を奏でないと勿体ないじゃあないかね。セバスチャ…

通信22-39 ベートーヴェンは雨戸にも音符を書いたらしい

久々にいつもの朝が戻ってきた。いつもの朝?うん、寝ぼけまなこで珈琲を啜りながらバッハのコラールと戯れる朝さ。これまで何十年もの間、勉強しているという感覚で読み込んでいたバッハの譜面だけど、最近はただただそれらに触れるのが楽しくてしょうがな…